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子供たちの新生活が落ち着くことが最優先だと、私も思ったし匡も言ってくれた。
匡は『トーウンコーポレーション社外監査役』のほかに、『税理士法人 K&Y会計事務所代表』の肩書も持っていた。
共同経営者は匡が実家の事業を担っていた時に知り合った人で、独立時に誘ってくれたらしい。
従業員が八名いるが、与えられた業務をこなせば出社の必要がないという勤務形態をとっているから、必要があれば土日でも顧客の対応をするし、うまくスケジュール管理をすれば平日でも休めるという。
そんなわけで、私が東京にいる間は匡も東京で過ごす時間を作って、同棲のような生活をしていた。
子供たちとの新生活は嬉しいけれど、匡との暮らしが終わってしまうことを少し寂しいと感じたことは、子供たちには内緒だ。
「ね」
「うん?」
「籍を入れることにこだわらなくていいからね」
「は?」
「子供のこともあるし、さ。匡だってひと財産あるなら、ね?」
「ね? って?」
「……」
「バツイチ子持ちが金目当てに同級生社長を誑かした、とか?」
「言葉は悪いけど、まぁ、うん」
「バーカ! 今時、バツイチも再婚も珍しくないし、誰がそんな風に思うよ。なんなら、元カノに未練タラタラで金をちらつかせて強引に結婚した、って感じにしとこーぜ」
「信じないわよ、誰も」
「なんで?」
「誰がどう見たって、匡がハズレクジじゃない」
「特賞の景品にハズレって書いてあったら、どっちなんだろうな?」
互いのぬくもりを感じながら、そんな話をしたのは東京での最後の夜。
私が覚悟を、決めた夜だった。
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