9.幸せのカタチ、一緒ならきっと

5/20
前へ
/150ページ
次へ
***** 「お母さん、大丈夫?」  息子が心配そうに私の足首を覗き込む。 「大丈夫! ちょっと、ぐきってなっただけだから、明日には治るよ」 「……」  今更、日頃の運動不足を嘆いても仕方がない。  昨日、部屋の中で湊とサッカーをしていた私は、思うように動かない身体に苛立ち、ムキになり過ぎた結果、転んで足首を捻った。  豪快に転んだものだから、築三十五年の家が軽く揺れたほど。  捻ってからすぐに湿布を貼っていたのだけれど、今朝はくるぶしが少し腫れている。  情けない。  バスケ部だった学生時代は、何キロも走った後にドリブルやシュート練習をして、更に試合(ゲーム)までしていたのに、八畳間の端と端でボールを蹴っていただけで息が上がり、左右に振られて転ぶだなんて。  はぁ、と自己嫌悪のため息をつく。  せっかくの連休に、息子と遊んでやれないどころか、暗い表情をさせてしまうなんて。 「湊」 「ん?」 「来週、サッカーボール買いに行こうか」 「……いいよ」  イントネーションからして、『いらない』の意味のいいよ。 「どうして?」 「別に――」  ピーンポーン  インターホンが鳴り、お母さんがモニターを覗く。 「あら、匡ちゃん」 「え?」 「匡!?」  湊がぱあっと表情を変え、一目散に玄関に駆けていく。  会う約束はしていない。  この連休は忙しいと言っていた。が、確かに玄関から匡の声が聞こえる。 「お邪魔します」
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6807人が本棚に入れています
本棚に追加