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匡が湊にサッカーができる場所を聞き、湊が学校のグラウンドを指定する。
少年団などで使っていなければ、解放されているはずだ。
「千恵。湊とサッカーしてくるわ」
「うん」
満面の笑顔でサッカーボールを抱きしめ、匡の足元から離れない湊は、どこからどう見ても父親と遊びたがる息子の姿。
「湊」
「うん?」
「良かったね」
「うん!」
寝そべったまま二人を見送った。
窓から見ていると、湊が匡になにか話している。
「湊があんなに懐くとは思わなかったわね」
お母さんがコーヒーの香りが漂う私のマグカップを、テーブルの端に置く。
「帰ってきたら、パパって呼んでるかもね」
「それはさすがに……」
マグを手に取り、口に運ぶ。
「匡ちゃん、いい父親になれそうじゃない」
「……そうだね」
匡が子供を望めない身体であることは、初対面で彼自身が両親に話した。
その上で、梨々花と湊を精いっぱい可愛がって育てたいと。
梨々花は、私が匡と再婚することに反対はしていない。
ただ、また引越ししなきゃいけない、とか、名字が変わるのはなぁ、とか言っているだけ。
私ではなくお母さんにこっそり言っていたそうなのだが、梨々花は実父より十歳も若い匡が新しい父親になることを、少し喜んでいるらしい。
その話を聞かなくても、匡がとあるアーティストのコンサートのアリーナ席を取れると話した時の食いつきようを見れば、わかっていたが。
トーウンコーポレーションが、梨々花が好きな男性グループのコンサートでスポンサーになっており、関係者席を取れるというのだ。
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