9.幸せのカタチ、一緒ならきっと

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 湊がコーラの味を覚えたのは札幌に来てからで、最近はそればかり飲みたがるから困る。 「教えてもらって良かったです」と匡がお母さんに言った。 「湊、喜んでくれたみたいだし」 「でも、仕事忙しかったんでしょう?」 「半日くらい、大丈夫です」  大丈夫じゃない。  九月決算の会社が数社あるから、十月の半ばくらいまでは会いに来られないかもしれないと、前に来た時に言っていた。  せっかくの連休なのに、とも。 「けど、千恵が怪我してんのはビビッた。気をつけろよ」 「電話の後でやっちゃったのよ」と、お母さんが笑う。 「昔はバスケ部のエースだったとか、嘘だったりして」  二枚目を待つ梨々花が、テレビを見ながら言った。  嘘じゃないけど、バスケをやめて二十年近く経っている。昔の栄光なんて、運動不足のアラフォーの前ではなんの意味もない。 「それはホントだぞ? 千恵が飛ぶと、ポンポン点が入るんだよ」 「匡ちゃん、お母さんがバスケしてるの見たことあるの?」 「あるぞ? 中学だけだけど」 「あれ? 梨々花、お母さんと匡ちゃんが中学の同級生って知らなかったの?」  お母さんがお好み焼きをひっくり返しながら聞く。 「知らない!」  話したことがあるような気がするけれど、バタバタしている時で忘れているのかもしれない。
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