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湊がコーラの味を覚えたのは札幌に来てからで、最近はそればかり飲みたがるから困る。
「教えてもらって良かったです」と匡がお母さんに言った。
「湊、喜んでくれたみたいだし」
「でも、仕事忙しかったんでしょう?」
「半日くらい、大丈夫です」
大丈夫じゃない。
九月決算の会社が数社あるから、十月の半ばくらいまでは会いに来られないかもしれないと、前に来た時に言っていた。
せっかくの連休なのに、とも。
「けど、千恵が怪我してんのはビビッた。気をつけろよ」
「電話の後でやっちゃったのよ」と、お母さんが笑う。
「昔はバスケ部のエースだったとか、嘘だったりして」
二枚目を待つ梨々花が、テレビを見ながら言った。
嘘じゃないけど、バスケをやめて二十年近く経っている。昔の栄光なんて、運動不足のアラフォーの前ではなんの意味もない。
「それはホントだぞ? 千恵が飛ぶと、ポンポン点が入るんだよ」
「匡ちゃん、お母さんがバスケしてるの見たことあるの?」
「あるぞ? 中学だけだけど」
「あれ? 梨々花、お母さんと匡ちゃんが中学の同級生って知らなかったの?」
お母さんがお好み焼きをひっくり返しながら聞く。
「知らない!」
話したことがあるような気がするけれど、バタバタしている時で忘れているのかもしれない。
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