9.幸せのカタチ、一緒ならきっと

12/20
前へ
/150ページ
次へ
「ね、匡ちゃん! お母さんて中学生の頃は可愛かった?」  頃『は』と言われると、今はどうなのかと大人げなくムッとしてしまう。 「めっちゃ可愛かった。いや、格好良かった、かな」  素直に褒められると、それはそれで恥ずかしい。 「匡ちゃん、その時からお母さんのこと好きだったの!?」  さすが女子中学生。恋バナに前のめり。 「うん、実は」 「え!?」  声をあげたのは、私。 「聞いてないんだけど?」 「言ってなかったからな」  大学時代も、再会してからも、そんなことは聞いていない。 「今だから言うけどさぁ」  湊が、コーラが入ったコップを二つテーブルに置く。  ダイニングテーブルには、お父さん以外の五人が座って、ホットプレートを囲んでいる。お父さんは食べ終えて、ソファに座っていた。 「千恵を追っかけて東京の大学に行ったんだよね」 「……はぁ!?」  それも、初耳だ。 「高三の夏くらいに、友達伝いで千恵が東京に行くって聞いて?」  聞いて? じゃない。  そんな親も巻き込む人生の一大イベントを、昔好きだった女に合わせるなんて、驚きを通り越して呆れてしまう。  あれ? そう言えば――。 「好きな女と同じ大学に行きたかった、って……前に――」 「――そ。それ、千恵のこと」  その話を聞いた時、私は、匡には私と付き合う前に、それほど好きだった女がいたんだと、複雑な気持ちになった。  まさか、私のことだったなんて……。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6832人が本棚に入れています
本棚に追加