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「ね、匡ちゃん! お母さんて中学生の頃は可愛かった?」
頃『は』と言われると、今はどうなのかと大人げなくムッとしてしまう。
「めっちゃ可愛かった。いや、格好良かった、かな」
素直に褒められると、それはそれで恥ずかしい。
「匡ちゃん、その時からお母さんのこと好きだったの!?」
さすが女子中学生。恋バナに前のめり。
「うん、実は」
「え!?」
声をあげたのは、私。
「聞いてないんだけど?」
「言ってなかったからな」
大学時代も、再会してからも、そんなことは聞いていない。
「今だから言うけどさぁ」
湊が、コーラが入ったコップを二つテーブルに置く。
ダイニングテーブルには、お父さん以外の五人が座って、ホットプレートを囲んでいる。お父さんは食べ終えて、ソファに座っていた。
「千恵を追っかけて東京の大学に行ったんだよね」
「……はぁ!?」
それも、初耳だ。
「高三の夏くらいに、友達伝いで千恵が東京に行くって聞いて?」
聞いて? じゃない。
そんな親も巻き込む人生の一大イベントを、昔好きだった女に合わせるなんて、驚きを通り越して呆れてしまう。
あれ? そう言えば――。
「好きな女と同じ大学に行きたかった、って……前に――」
「――そ。それ、千恵のこと」
その話を聞いた時、私は、匡には私と付き合う前に、それほど好きだった女がいたんだと、複雑な気持ちになった。
まさか、私のことだったなんて……。
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