9.幸せのカタチ、一緒ならきっと

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 札幌に帰って来た時に話し合って、匡の実家へは子供たちが結婚を了承してくれてから挨拶に行くことにした。 「あんたたち、結婚するのに報連相が足りなくない?」  まさかお母さんの口から報連相の言葉を聞くとは。 「俺、知ってる! 報告、連絡、相談でしょ?」  湊がドヤ顔で匡に言った。 「うん、そうなんだけど――」 「――学校では『いかのおすし』が大事だって言われるけどね」 「いかのおすし?」 「行かない、乗らない、押さない? あれ?」 「いや、今はそれいいから」  正直、よく聞くけれど私もうろ覚えだ。 「とにかく! 更地にして売るつもりだって聞いたから、俺が貰った」  匡のご両親は会社を手放した後、手元に残していた不動産収入で生活されていて、今は年金も貰っているとか。  一年に一度、お兄さんのいる香川に旅行するのを楽しみにしているんだそう。 「そういうわけなんで、湊と梨々ちゃん」  匡がお好み焼きを頬張る二人に向き直る。 「千恵と俺が結婚すんの許す気になったら教えて。家、建てるから」  え、家を建てるタイミングを子供に任せるの? 「引っ越しはするけど、この家から歩いて行ける距離だし、転校はしなくていいから」  冗談っぽく始まった会話のはずが、匡が真剣に子供たちと向き合い、子供たちも箸を置いてじっと聞いている。  両親もいるのに、何を言うつもりなのか。 「もちろん、一人部屋をつくるし、習い事とかやりたいことがあったら応援する。お父さんやお祖母ちゃんに会いに東京に行きたかったらそうしていい。だから――」
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