9.幸せのカタチ、一緒ならきっと

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 頷いた湊の頭に、匡が手をのせる。  二人が父子になるのもそう遠くないことだろう。  ふと、考えた。  昔、別れずにいたら、結婚しただろうか。  そして、子供ができないことに苦しんだのだろうか。  もしかしたら、子供のいない人生を選んだかもしれない。  もしかしたら、子供ができないことを理由に別れていたかもしれない。  それは、わからない。  わからないけれど、匡が笑っている現在(いま)の姿を見たら、私たちの別れも無駄じゃなかったんだと思う。  子供を持てない匡を、父親にしてあげられる。  離れていた十六年。幸せだったり苦しかったり、笑ったり泣いたりした十六年は、きっとこうして笑い合える現在(いま)に繋がっている。  きっと、十六年後も私たちは一緒にいる。  大丈夫。  私たちは幸せになれる。  匡と一緒なら、絶対。  だから、子供たちと話し合ってみよう。なるはやで。 「打った!」  お父さんの声に、全員がテレビを見る。  ずっと不調続きだった若い選手が、確信のガッツポーズをしながら走っている。 「入ったぁ~!!」と両手を上げたのは、お母さん。  私の結婚話はどこへやら。  なぜかお母さんが盛り上がり過ぎて、ハイタッチを要求している。 「ずっと打てなくて可哀想だったのよぉ。もう大丈夫! こっからだ!」  テレビの前に正座して、誰にともなく言っている。  シーズン、もうすぐ終わるけど……。 「なんか、すごい野球好き?」  匡が耳打ちする。 「新しい監督に代わってから、ヒートアップしてるみたい」 「へぇ……」  お父さんとお母さんも人生を楽しんでいる。 「来年はみんなで観に行くか」 「そうね」  その頃には、名実ともに家族になっていたいなと、思った。
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