9.幸せのカタチ、一緒ならきっと

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*****  そして、半年後の四月。  私は、柳澤千恵、となった。  子供たちの名字をどうしようか、散々迷ってみんなで『柳澤』にした。  匡は泣いて喜んでくれた。  湊も嬉しそうだ。  だが、一番喜んでいるのは、梨々花だろう。  それもそのはず。  私たちの入籍をかなりグイグイ後押ししたのは娘。  その理由は――。 「匡ちゃん! コレ貼っていい? いいよね!?」  私は二階に駆けあがる。 「ちょっと! 新しい壁にいきなり穴開けないでよ」 「ええぇ!?」 「いいんじゃないか? 梨々の部屋だし」 「そんな甘いこと言ってたら、壁中穴だらけにされるじゃない! 大体、なんだってこんなにたくさんもらってきちゃうのよ」 「ええぇ……。俺のせい!?」  そう、匡のせいだ。  匡のせいで早々に家を建て、入籍して、引っ越すハメになった。  実家での梨々花の部屋は、四畳半。私と湊で八畳の部屋を使っていた。  が、匡が梨々の好きなアーティストのグッズを与えすぎたせいで、部屋が手狭になったのだ。  その最たるものが、等身大抱き枕。しかもメンバー全員分。  真空で持ってきた時は、まさか開けたとたんにこんなに大きくなるなんて思わなかった。  そして、一度開けると、再び真空にしなければずっと、大の男三人が部屋に寝そべっている状態。  梨々花は大喜びだったが、私にしてみたらとにかく邪魔。
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