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壁に立たせてみても、いつの間にか倒れているし、立ったままでもふと目が合うとギョッとする。しかも、いつでも白い歯を見せて笑っているその表情が、どうも好きになれない。
梨々花とすったもんだとやり合った末に、匡に泣きついたのだ。梨々花が。
「匡ちゃん、家建てて! 私、広い一人部屋が欲しい!」と。
なんとも情けない。
が、私同様に抱き枕を邪魔に思っていたお母さんの賛成もあり、めでたく入籍&新築となった。
そして今、梨々花が真新しい壁に穴を開けて、等身大ポスターを貼ろうとしている。
一週間後には、私の両親と匡の両親も一緒にオープン戦に行く。
匡の両親は、私と子供たちを歓迎してくれた。
紀之のお義母さんも、私たちの結婚を喜んでくれた。
聖菜さんは女の子を出産し、娘を心配したご両親が同居を申し出たらしい。
同居すれば、今までのように遊び歩くことはできないだろう。
紀之には、それくらいがちょうどいいのかもしれない。
「……ったく」
壁に貼られたポスターを向かってため息をつく。
「飽きたらゴミの山じゃない」
「まぁまぁ」
「もう貰ってこないでよ!?」
「はいはい」
本当にわかっているのか。
匡はとにかく子供たちに甘い。
梨々花にはアーティストのグッズ、湊にはサッカーボールやらユニフォームやらを買い与える。
匡の勧めで冬期間、フットサルクラブに入っていた湊は、この春からサッカークラブに入ることになった。
大抵の子はもっと早くから始めているから、湊が試合に出ることはないかもしれないけれど、匡が言うには中学入学までには他の子に追いつくはず。
湊が匡の後輩になるかもしれないと思うと、不思議な感覚だ。
子供たちは匡を『お父さん』とは呼ばない。
匡も呼ばせようとしない。
それでいいのかもしれない。
大切なのは呼び名じゃない。
「匡! コレ貼ってぇ」
今度は湊の声。
「湊まで!?」
「ワールドカップのポスター」
「はぁ!?」
「まぁまぁ」
私の肩をポンポンと叩いて、匡が湊の部屋に行く。
「嬉しそうな顔しちゃって……」
私はぐっと伸びをして、引っ越し蕎麦の準備に取りかかった。
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