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「卒業してから一度も連絡とってない同級生に会って、第一声が『離婚したんだってぇ?』ってのは、どうなの。結婚報告をした覚えもないんだけど」
私は、卒業してからも連絡を取り続けている同級生の前で、テーブルに上半身を投げ出して、だらしなく突っ伏した。
「根掘り葉掘り聞かれるのも嫌だけど、離婚した同級生の名前を次々に挙げられるのも、嫌だわ」
「そんなにいるもの?」と、柚葉が聞く。
私は両肘をテーブルに立て、頬杖をつく。
「いた。どっからそんな情報が入ってくるんだろうね」
「結婚しても実家近くにいる人は、詳しいかもね。自分が卒業した学校に子供を通わせてる人、結構いるみたいだし」
「地元に帰ってきた、って実感するわ」
柚葉が笑いながら、キッチンカウンター越しにコーヒーの入ったマグを差し出した。
私はそれを受け取り、熱いうちに一口飲む。
ほぅっと一息つき、私が持って来たクッキーを皿に移す柚葉を眺める。
幸せそうだ。
顔色が良くて、表情が穏やか。
入院中に会った時は、酷かった。
私も酷かったが。
髪を切ったせいもあるだろう。
雰囲気が明るく、爽やかになった。
それに引き換え、私は退院してから自分で白髪染めをしただけで、スッキリしたショートヘアは襟足が伸びてくりんと跳ね、ウルフカットのようになりつつある。
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