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「簑島だよね?」
「おう。なんだ、同い年には見えないな」と、簑島は自分の頭を撫でた。
すっかりボリュームのなくなった髪が、ぺたりと横たわってしまう。
「ははは……」
真面目一辺倒だった簑島は、印象は当時のままで、今日もきっちりスーツにネクタイまで締めている。黒縁眼鏡も変わっていない。
真奈美が下座に一人で座り、香苗はその斜向かいの壁側、簑島は香苗の隣に座り、私は簑島の隣に座った。
「簑島、なんで休みの日までスーツ?」と、香苗が聞く。
「あ! この前、おっさんくさいって言ったの、根に持ってる?」と、真奈美。
「スーツで来ようと思うくらいにはな」と、簑島。
「この前?」
「はははっ。一年前はこの前じゃねーよな」
「クラス会。千恵は欠席だったでしょ?」
「ああ……」
柚葉からメッセージが回ってきた気がする。
「失礼致します」と、スタッフが注文用のタブレットを持って入って来た。
「ファーストドリンクは全員お揃いになってからにしますか?」
あと三人が来るようだが、私が知らされた集合時間は過ぎた。
「頼んじゃお」と真奈美が言った。
「ビールでいいよね?」
ファーストドリンクのみスタッフに直接オーダーし、後はタブレットでの注文になると説明を受ける。
パーティープランで予約済だが、単品で追加オーダーも可能だという。
「ね、あとは誰が――」
「――三人は仕事の後で来るって言ってたから、先に始めよ」
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