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「近藤も来るんだろ?」と、簑島が真奈美に聞いた。
「うん」
「やっと離婚成立したんだ?」
「みたい」
「近藤?」
憶えのない名前に口を挟むと、簑島が私を見た。
「隣のクラスの近藤、憶えてる?」
隣のクラス、と言われて思い出す。
「ツーブロックにして来たら先生に怒鳴られて、次の日には坊主になってた奴!?」
「やっぱ、近藤っていえばソレだよねぇ」と、香苗が笑う。
「近藤、今はイ〇ンに入ってる美容室の店長してるんだけどさ」
「美容師なの?」
「そ! 今じゃ、ツーブロックを作る方」と、真奈美。
「本人は?」
「ロン毛。パーマかけて結んでんの」
「うそぉ!」
「ホント、ホント!」
四人の笑い声が響く中、ファーストドリンクが運ばれてきた。
「ひとまず、乾杯しよ!」と、真奈美がジョッキを持ち上げた。
「バツイチにかんぱ~い!」
「そんなのに乾杯とかしないから!」と言って、香苗がさっさとジョッキに口をつける。
私と簑島は笑いながら互いのジョッキを軽く合わせ、一口飲む。
そして、簑島に「で?」と話の続きを催促した。
「で、一年前のクラス会に飛び入り参加してたんだけどさ? 泥沼離婚調停中だって言ってたんだよ」
「え」
思わず笑顔が引きつる。
「なんか、デキ婚したんだけど、生まれた子供が自分の子供じゃなかったらしくて」
「うわぁ」と、思わず心の声が漏れる。
現実にあるんだ、と思った。
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