1.夢に見る、会いたくなかった男

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「なのに、奥さんが別れてくれなくて、調停だって」 「旦那が調停を申し立てるのって珍しいよね」と言った香苗のジョッキの中身は、既に半分。 「そうなんだ?」 「最近はそうでもないのかな? 私の時は、妻側からの申し立てが多いって聞いた」 「香苗、調停したの?」 「したよー。子供三人もいるんだよ? きっちり養育費貰わないと! 口約束なんて、当てにならないじゃない」 「なるほど」 「千恵はしなかったの?」 「私は――」  料理を持ったスタッフが歩いて来るのに気が付いて、私は言葉を切った。  すぐに、スタッフから声をかけられる。 「――失礼致します」  スタッフは両手に持った大皿をテーブルの中央に置いて。「サーモンと玉ねぎのカルパッチョと自家製ピクルス、生ハムとサラミの盛り合わせです」と説明をして去る。 「美味しそう!」  満面の笑みでそう言うと、香苗が取り皿とトングを持つ。 「全員分、分けちゃっていい?」 「皿ばっか増えるから、後の奴らは後でいいんじゃないか?」と、簑島。 「そ? あ、皿分ける?」 「一緒にのっけちゃっていーよ」  香苗が率先して、テキパキと料理を取り分ける。  私と真奈美は手持ち無沙汰で顔を見合わせ、笑った。 「そういえば、香苗と簑島って一緒に学級代表してたよね?」 「そうそう」 「体育祭の参加競技も、学校祭の出し物も、二人でテキパキ決めてくれて」 「仕切りたがりでウザがられてたけどね」  料理を載せた皿を、香苗が簑島に渡し、簑島が私に渡す。
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