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「なのに、奥さんが別れてくれなくて、調停だって」
「旦那が調停を申し立てるのって珍しいよね」と言った香苗のジョッキの中身は、既に半分。
「そうなんだ?」
「最近はそうでもないのかな? 私の時は、妻側からの申し立てが多いって聞いた」
「香苗、調停したの?」
「したよー。子供三人もいるんだよ? きっちり養育費貰わないと! 口約束なんて、当てにならないじゃない」
「なるほど」
「千恵はしなかったの?」
「私は――」
料理を持ったスタッフが歩いて来るのに気が付いて、私は言葉を切った。
すぐに、スタッフから声をかけられる。
「――失礼致します」
スタッフは両手に持った大皿をテーブルの中央に置いて。「サーモンと玉ねぎのカルパッチョと自家製ピクルス、生ハムとサラミの盛り合わせです」と説明をして去る。
「美味しそう!」
満面の笑みでそう言うと、香苗が取り皿とトングを持つ。
「全員分、分けちゃっていい?」
「皿ばっか増えるから、後の奴らは後でいいんじゃないか?」と、簑島。
「そ? あ、皿分ける?」
「一緒にのっけちゃっていーよ」
香苗が率先して、テキパキと料理を取り分ける。
私と真奈美は手持ち無沙汰で顔を見合わせ、笑った。
「そういえば、香苗と簑島って一緒に学級代表してたよね?」
「そうそう」
「体育祭の参加競技も、学校祭の出し物も、二人でテキパキ決めてくれて」
「仕切りたがりでウザがられてたけどね」
料理を載せた皿を、香苗が簑島に渡し、簑島が私に渡す。
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