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第三話『No.003 都内M町 某アパート 事故物件に住むアルバイト 前編 ~再会、ダイスケ~』
『先輩、事故物件とか瑕疵物件とかっていうのしってます? 』
なんとなくはテレビや雑誌などで聞き覚えがあったので、知ってはいた。
久々に、学生時代の後輩、竹下から電話をもらい近場で飲む約束をした。
こういう久しぶりに会うと、必ず嫌な予感がする。
ちんけな町の飲み屋の角でヤス酒をちびちびやりながら懐かしい話を聞いた。
『そうだ、だいちゃん、ダイスケ元気か?あいつ今何やってる?』
それが、引き金になったように、
竹下の顔から光が消える。
とたんに暗い顔になるのだ。
『あぁ、あいつですね、ダイスケ。
あいつ、死にましたよ、
でも、まああいつのことは話すのはやめましょうよ』
なんだか煮え切らない様子に、
川崎は突っ込んで聞いてみる。
すると、
『事故物件っすよ、
さっき言ったでしょ、
あるんすよ、
ダイスケの家がそうなんす
なぜか引っ越してもついてくるらしくて』
何が(ついてくる)というのだろう。
詳しく話を聞いた。
以下が、竹下がダイスケから聞いた話のすべてだ。
ダイスケの、借りたアパートは、2DKのアパート。
築年数もそれほど経っていない。
町にある中丸不動産という小さな不動産屋が、安い物件はないかという自分の条件に合いそうなものをいくつかピックアップしてくれたが、
どれも、予算に収まりそうにないものだった。
一軒、駅から距離があるが、自転車が一台あれば利便性が高い物件を見つけた。
そこには、赤字で(心理的瑕疵有り)という文字があった。
不動産屋に聞いてみたという。
『この物件、気になってるんですが』
業界用語でいうと、マイソク(物件の賃貸料金、間取りが書いてあるチラシ紙)をいくつかある中から選んで差し出すと、
あからさまに不動産屋の表情が変わる。
『ああ、そのアパートね、おすすめは…しない…できればやめたほうがいいですよ』
そう言われるとますます気になる。
内見をお願いした。
それが、思えば間違いのはじまりだった。
内見には、若いのを向かわせるという。
そして、実際に来たのは今時の茶髪のアンちゃんだった。
『今から開けますからね…』
そう言いながら、鍵の束から先ほどから鍵を差しては抜いてを繰り返している。
なかなか入りたい目当ての部屋の鍵が、見つからない。
やっと15分くらいして部屋の鍵を見つけ、開けた。
『ビンゴ、これすね』
がチャリと開いた部屋の中は、長らく掃除していないのかかび臭さとむわんという夏特有の熱気に蒸し風呂かサウナのようになっていた。
窓を前回にすると、ようやくかろうじて人間がいれる空間にはなった気がする。
さすがに安いだけはあるな、と思ったという。
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