『口利き屋~闇のハローワーク~』

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『No.003 都内M町 某アパート 事故物件に住むアルバイト 中編  ~事故物件の事故物件たる所以(ゆえん)~』 実は、この部屋に住むことになったのもダイスケは、 別の不動産会社の社長から頼まれて住んでくれないかとひそかに頼まれて『アルバイト』として雇われたのだという。 ライバル不動産会社の、事故物件に実際に住み調査、報告するのが、自分の勤めだという。 なので、自らわざと事故物件を選び、住もうとしているというわけである。 家賃は、社長持ちという条件だったので、 それは、大学生だったダイスケにはかなり好条件のアルバイトだった。 浮いたお金で好きな海外旅行に出掛けることもできる。 楽しい新生活の筈だった。 住みはじめてまずおかしいと思ったのは、水が勝手に出たり止まったりする。 ドアが勝手に開く。 そんな現象が頻繁して起きる。 寝ていると、必ず誰かにじっと見られているようで眠れない。 兎に角居心地が悪いのだ。 ただし、逃げ出すわけにはいかない契約で、一月は住まなくてはお金がもらえないのである。 我慢の日々がはじまったのだ。  ーそれから、ダイスケとは、連絡がとれない。 電話を最初は、たまにしていたが、音信不通になってしまった。   怪異現象のことを聞いていたから、心配になり、 よくそういった怪異現象の起きる仕事場で働く先輩の川崎に、連絡したということらしい。 『今から一緒にその例のアパート行けませんかね?』 そう、竹下がいつになく真面目な顔で言うので、 川崎は昔ながらの癖でまた、安請け合いして、 『わかった』と返事をしてしまったらしい。 ただ、そういった現場は、必ず(気合い)と(覚悟)が必要不可欠である。 川崎は、また何か起きるのではと少し不安だった。 あの(やおびくのお見合い)の件以来、 なんだか(怪異)の匂いに敏感になったのは事実だ。 自分が、村で住んでいたあの二階建ての家の二階に感じていたのと似たような(厭な予感)が、 これから行く場所にはあるような気がするからだ。 もうじきその問題のアパートにたどり着く。 カーナビが、(その先の角を右に曲がるように指示する) そして、現場に着いてしまった。
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