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その後、忙しい中で連絡を取り合い、私たちは会うようになった。とは言え、四ヶ月に一度会うか会わないかの頻度である。しかし、毎日共にいたあの頃よりも、父を身近に感じている。
話のネタを作る為にも、何度か花を育ててみた。最終目標は、窓越しの芸術品みたいな――と意気込んでいたが、そもそも芽吹きさえしなかった。
本に指導を受け、リトライしたものの駄目だった。この話を父にしたら、父も同じことをしでかしていた。
因みに現在も、連敗記録の打破に励んでいる。
期待の対象は、狭い玄関にある。小さな鉢に満たされた土は、まるっきり昨日のまんまだ。置いたままのペットボトルから、水と念を注いだ。
それから、後で後悔するぞと言いながら、体を布団に横たえる。そこでメールをチェック――そこまでが帰宅後のルーティンだ。
スーツが捻れるのも気にせず、アプリを開く。公式や迷惑メールに埋もれ、目的のメールはぽつりとあった。宛先は父だ。実に半月ぶりの返信である。
開くと一言、"やりました"との本文が現れた。一瞬事件でも起こしたかと思ったが、添付ファイルにより撤回された。
少しぶれた写真の中、緑の新芽がピースしていた。
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