第3話 姉

4/4
前へ
/15ページ
次へ
彼の心臓の音が伝わってくる。 彼の息の音が脳に響く。 僕は恐る恐る、彼の耳元で僕の思いの全てを伝える。 「僕は、響輝、くんのこと、大好きだから、何があっても、響輝くんのこと嫌いになんか、ならないから、だから、、」 僕は彼の悲しむ顔を見たくない。 「だから、、隠してる本音、全部、言って、欲しい。」 僕の言葉に、彼が少し反応したような気がした。 しばらくの沈黙が流れる。 彼を抱きしめていた僕の手を、彼が軽く握ってくれた。 「…ごめん。」 彼は小さく謝ると、僕の手を離し、僕の方を向き、僕を抱きしめた。 そのときも、顔は俯いたままで、表情が見えなかった。 「…ごめん、ごめん、、ありがとう。」 彼は謝りながら、僕を抱きしめる手を強めた。 僕は最初戸惑ったけど、僕も彼を抱きしめた。 彼は多分、泣いていた。 微かに彼の息の音がかすれていて、彼の背中がかすかに震えていた。 彼が落ち着いたなと思って、彼を抱きしめていた手を緩めると、彼の手も緩められた。 彼から離れようとしたとき、彼に肩を押された。 下にカーペットが引いてあったおかげで、頭を打たなくて済んだ。 彼の手が当たってしまったんだと思い、起き上がろうとしたとき、彼が覆いかぶさってきた。 「…え?」 「…ごめん。」 彼は僕にキスをした。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加