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しばらくして、フライドポテトが来た。
注文ミスで、ひとつしか来なかった。
彼はもうひとつ頼もうとしたけど、僕はそんなにお腹も空いていなかったから、大丈夫のかわりに首を振る。
僕を見た彼は、その意図をくみ取ってくれたようだ。
店員さんは戻って行った。
「…勉強の続きしようか。」
僕は、なんとなく誤魔化すように言った。
そんな僕を見て、彼は何を思ったのか、鞄を持って僕の隣に座った。
「やっぱりこっちの方がいいよね。ずっと思ってたんだけど、やっぱり男二人は窮屈だな。やっぱり、向こうに座ったほうが、」
僕は、さっきよりも大きく首を振り、彼のノートと教科書を渡す。
「そっ、そんなことない。…響輝くんがいいなら。」
彼は、僕から教科書とノートを受け取る。
「…ありがとう。」
彼の動きが一瞬止まったように感じた。
彼は、テーブルに置かれたフライドポテトを僕と彼の間に置く。
「今日教えてくれるお礼。」
「…そんな、悪いよ。」
「いいよ、俺がしたいだけだから。一緒に食べよう。」
そう優しく微笑んだ彼は、またノートに視線を落とした。
僕も彼の視線の先のノートをみる。
僕は、彼のノートの文字を読んでいて、彼がこっちを見ていたことに気が付かなかった。
ふと顔をあげると、彼と目が合う。
「…な、、なに?」
僕は彼の目を見たまま問いかける。
少しの間が空く。
「…いや、ここがわかんなくてさ。」
そういうと、ページのひとつの問題を指さす。
「…ここは、教科書に書いてあった公式を使えば。」
僕が自分の教科書を開いているときも、彼は教科書ではなく僕を見ていた。
その事に、僕は気が付かない。
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