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「川添く〜ん、部活入らないなら、ここに名前だけくれなーい?」
「…え?」
読書をしていた休み時間に、声をかけられた。
例の女子二人だ。
「あちしたち、とある部活に入りたいんだけどぉ、あと1人はいらないと廃部らしいんだよね。」
「そんでそんで、別に参加しなくていいからさっ。名前だけ欲しいんだよね。なんなら苗字だけでもいいよ。それでさー。」
「何話してるの?」
「あ、望田じゃーん。」
僕の席に人が3人も集まっている。
ただ事じゃない。
「川添くんの苗字が欲しいって話。」
「…は?」
「なんか微妙に違くね?」
女子二人は彼に経緯を説明した。
「で、名前が欲しいわけ。」
紙を揺らしながらそう言う女子。
「なんだ、そういう事か。なんの部活なんだ?」
「バスケマネージャー部だよー。」
「…は?」
「バスケ部も廃部になりかけてんのに、マネージャーなんて、廃部確定じゃん?」
「でも、あちしたちはマネージャーに憧れてるわけ。」
そう話す女子二人はすごくキラキラした目をしていた。
「かと言ってガッチガチのサッカー部はちょっとムリって言うかぁ?ゆる〜くでいいんだよね。」
「そうそう、川添くん、望田と仲いいなら好都合だよね。望田バスケ部だし。」
「直也は、塾が忙しいんだよ。」
「だーかーらー、名前だけでいいの!廃部にならなきゃそれでいいから。」
そう言って僕の机に申込書を置く。
御丁寧に部活名は書いてあった。
♡つきで。
それなら、と僕は名前を書いた。
名前を書いた申込書を女子に渡す。
女子は嬉しそうにそれを受け取る。
「ありがと〜!!!!」
女子二人はスタスタと立ち去った。
「…その、大丈夫なのか?」
彼は気を使ってくれた。
僕は笑顔で頷く。
「…うん、大丈夫。」
授業が始まるチャイムがなった。
その後知ったけど、マネージャー部は、バスケ部と仲良くなるための部活らしい。
けど、バスケ部よりもサッカー部に力を入れているこの高校では、バスケ部は段々衰退していた。
そんなバスケ部のマネージャーになりたがる物好きはあまりいなかった。
だからか、マネージャー部に入るほとんどが、幽霊部員らしい。
僕は、塾がない日は参加しようかな、とも思った。
部活中の彼と一緒にいられるかもしれないと思ったから。
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