第2話 友達

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「川添く〜ん、部活入らないなら、ここに名前だけくれなーい?」 「…え?」 読書をしていた休み時間に、声をかけられた。 例の女子二人だ。 「あちしたち、とある部活に入りたいんだけどぉ、あと1人はいらないと廃部らしいんだよね。」 「そんでそんで、別に参加しなくていいからさっ。名前だけ欲しいんだよね。なんなら苗字だけでもいいよ。それでさー。」 「何話してるの?」 「あ、望田じゃーん。」 僕の席に人が3人も集まっている。 ただ事じゃない。 「川添くんの苗字が欲しいって話。」 「…は?」 「なんか微妙に違くね?」 女子二人は彼に経緯を説明した。 「で、名前が欲しいわけ。」 紙を揺らしながらそう言う女子。 「なんだ、そういう事か。なんの部活なんだ?」 「バスケマネージャー部だよー。」 「…は?」 「バスケ部も廃部になりかけてんのに、マネージャーなんて、廃部確定じゃん?」 「でも、あちしたちはマネージャーに憧れてるわけ。」 そう話す女子二人はすごくキラキラした目をしていた。 「かと言ってガッチガチのサッカー部はちょっとムリって言うかぁ?ゆる〜くでいいんだよね。」 「そうそう、川添くん、望田と仲いいなら好都合だよね。望田バスケ部だし。」 「直也は、塾が忙しいんだよ。」 「だーかーらー、名前だけでいいの!廃部にならなきゃそれでいいから。」 そう言って僕の机に申込書を置く。 御丁寧に部活名は書いてあった。 ♡つきで。 それなら、と僕は名前を書いた。 名前を書いた申込書を女子に渡す。 女子は嬉しそうにそれを受け取る。 「ありがと〜!!!!」 女子二人はスタスタと立ち去った。 「…その、大丈夫なのか?」 彼は気を使ってくれた。 僕は笑顔で頷く。 「…うん、大丈夫。」 授業が始まるチャイムがなった。 その後知ったけど、マネージャー部は、バスケ部と仲良くなるための部活らしい。 けど、バスケ部よりもサッカー部に力を入れているこの高校では、バスケ部は段々衰退していた。 そんなバスケ部のマネージャーになりたがる物好きはあまりいなかった。 だからか、マネージャー部に入るほとんどが、幽霊部員らしい。 僕は、塾がない日は参加しようかな、とも思った。 部活中の彼と一緒にいられるかもしれないと思ったから。
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