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高校を卒業して大学生になり、ときには合コンに参加したりもしたけれど、澪は独り身のままだ。嶺亜のことを引きずっている訳ではない。宗介の言葉に後押しされて、前を向こうと頑張っている。だけど、意思に反して恋愛が出来なくなっていた。
「澪はかわいいのにもったいないよね」
彼氏持ちの友人にはそう言われた。髪は胸の辺りまで伸びて、丁寧に切り揃えられている。メイクも勉強して、少しだけ大人っぽくなった自覚はある。
外見に気を使うのは、いつ出会いが待ち構えているか分からないからだ。大学生になったんだから積極的に恋愛をしようと、澪は張り切っていた。
例えば友達に紹介してもらったテニスサークルの先輩は、押しが強すぎてちょっと合わなかった。澪は宗介のようにゆっくり関係を進めてくれる人か、嶺亜のように不器用ながらもたまに引っ張ってくれるくらいがちょうどいいのかもしれない。
ぐいぐいと積極的に来られると、自分に自信がなさすぎて、なんで私なんかに? という気持ちが先に立ってしまうのだ。
合コンで出会った人の中に、たまに波長が合うな、と思う人もいた。けれど、たいていそういう人は消極的で、恋愛が始まる前に終わってしまう。そんな感じだった。
「澪はなんでそんなに彼氏が作りたいの?」
なんだか焦っているみたい。
友人に言われたことに、ドキッとした。たぶん図星だったのだ。
彼氏がいないと、まだ嶺亜のことが忘れられていないみたいだ。背中を押してくれた宗介にも顔向け出来ない。
そんな気持ちで焦っていたのかもしれない。もう少しだけゆっくり慎重に相手を探してみようかな、と思い直した頃のことだ。
同窓会を開きます、という連絡が澪の元にやって来たのは。
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