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1話
昔、拓哉という小さな男の子がいました。
お父さんは、働かず、ギャンブルばかりしていたので、お母さんが、朝から晩まで働いていました。家には、怖い借金取りがやってきて、
「早く、借りた金返せや!」
と、怒鳴りつけたり、お父さんは、お酒を飲むと、いつもお母さんを容赦なく殴りつけました。
「オレが、こうなったのは、みんなお前らのせいだ! お前らなんか、消えれば良いんだよ!」
「やめてよ、お父さん! お母さんを、もう傷つけないで!」
拓哉が、泣きながらお父さんの服を引っ張ると、お父さんは、鬼のようなまっ赤な顔で、小さな手を跳ねのけました。そして、拓哉の頭を掴むと、何度も床に叩きつけながらいいました。
「誰に向かって、口を聞いているんだ! お前なんか、産まれてこなければよかったんだよ。誰も、お前なんか必要じゃないんだからな!」
やがて、お父さんが、事故で亡くなると、お母さんは、拓哉を連れて自分の故郷に帰りました。桜の花びらが春風に揺れる中、お母さんは、拓哉を抱きしめると、優しい声でいいました。
「………拓哉。これで、もう大丈夫だからね」
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