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惰性的に配信動画を流していると、いつの間にか夕食配布のアナウンスが流れていた。
雄太は椅子の背もたれに寄りかかり、天井を眺めた。
係員にかけた声以外、今日は誰とも話していない。
アナウンスが止むと雄太はドアを開けた。今度は、隣人と顔を合わせても大丈夫なようにちゃんとマスクをして。
弁当の包みを掴んで、右を向く。彼はまだ現れていない。
だが。
「……あ」
隣室の前に置かれた包みの上に、雄太がランドリールームで見つけた小銭入れが乗せてあった。
雄太は瞬きをした。意外と可愛い趣味の男みたいだ。
ドアに押され、ごそりと弁当の包みが動いた。
顔を上げると、ドアの向こうから姿を見せたイトウさんと目が合った。もう何度目か、優しく笑いかけられる。
雄太の胸が疼いた。
こっちからもコミュニケーションを取りたい。
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