二夜目

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 雄太はがま口財布を指差した。続いて、指先を彼に向ける。  ――それ、あなたの?  すると、彼はこくりと頷いた。  伝わった、と雄太は嬉しくなった。でもその直後、彼は届け物とともに部屋に引っ込んでしまった。 (……あ)  もう少し向かい合っていたかった。  左を伺うと、係員がこっちを睨んでいるのが目に入った。 「……ん」  雄太も委縮して身を引いた。  椅子に座るとほぼ同時に、部屋の備え付けの電話が鳴った。  さっきのことを怒られるか、と警戒する。でもここで拒否しては卑怯だと、雄太は受話器を取った。 『4032号室の方ですか?』 「あ、はい」 『謝るのとお礼が言いたくて』 「え?」
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