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部屋の中がしんとした。無言のスマホが不気味な存在に見える。
数秒後、間抜けな着信音がスマホから鳴り響いた。
見ると、隔離用のアプリが位置情報確認のビデオ電話への応答を要求していた。日本入国してから三夜目となる今日から隔離最終日まで、これが毎日不定期でやってくる。
(大事な話をしてたのに)
雄太は画面を睨んだ。
「すみません、ちょっと位置確認対応します」
仁に断ってアプリに移動し、応答ボタンをタップした。スマホを持ち上げ、部屋の壁と顔を画面に収める。
タイマーが作動し、カメラの向こうでAIが雄太の存在を確認する。
向こうの気が済むまで、画面に収まる無表情な自分を眺める。間抜けな気分だと思いながら、雄太は背景の壁を意識した。
そのすぐ向こうに仁がいる。少しくすぐったい。
やがてビデオ電話は終了し、雄太は仁と繋がるアプリに戻った。
『終わりました』
文字で報告すると、仁も文字で返した。
『じゃあかけるね。ビデオ電話にしていい?』
(え?)
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