三夜目

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「反対……とは違うけど、寂しがられたのと、惜しまれたのは否定しない」  あっさりと言われた。 「そう、ですか……」  それでも表現が雄太の状況と比べて柔らかい。寂しがり惜しむのは、大切、あるいは必要と思いながらその人の決断を尊重したということだ。雄太みたいに「理解できない」と見放されたのとは違う。  仁はさらさらと続けた。 「当然と言えば当然だけど。母親も妹も、頼れる人がいなくなるわけだし……だから向こうにいる間も連絡は欠かさずしてたし、朝早くからよく悩み相談や愚痴に付き合わされたな」  懐かしむように斜め上を向く。 「雄太くんは楽しくなかった?」 「まさか――」 「じゃあ迷ってるような質問をしたのはどうして?」 「迷ってる?」 「うん。『反対されなかったんですか?』と訊いたのはそういうことなのかなって。本当にイギリス行ってよかったのか今になって悩んでる、だから誰かに相談したい、みたいな」 「……」  雄太は虚を突かれ、固まった。それでも仁は続ける。 「僕でよかったら聞くよ。同じ行った者同士、わかることあるかもしれないし」
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