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周回衛星から本社への報告を済ませると、ぼくは彼に振り分けた部屋を訪ねた。
「内定おめでとう、リョウジくん。君、高校生だってね」
就活生――リョウジくんが振り返った。支給されたコットンパンツを穿き、裸の上半身には腹と背中に治療用のパッドが貼られている。
「へえ、本当に内定かよ。学歴底辺の下級市民、しかもバカップルまで引き連れてきた奴に。あんた降格されたりしないの?」
「もちろんだよ」ぼくはうなずいた。
自分の血を流して他人を救った。襲ってきた相手に反撃しただけなのに「威力を強くしすぎた」と自分を責めていた。打算があったにしても、危険な事故現場からぼくを救助してくれた。そんな人間、なかなかいるもんじゃない。環境のせいか自己肯定感が低く、自分の長所を言えないでいるけれど、君は他の人にはできないことをできる人だ。
そんな意味を込めて、うなずいた。
嬉しそうな顔をごまかすためか、リョウジくんは「ハハオヤに連絡する」と言って部屋を出て行った。彼が座っていたソファの向こう、大きな窓越しに深い宇宙が広がり、ぼくの姿が反射している。
あんな若者たちが他にもいるのかもしれないぞ。ぼくはその姿に向かって問いかけた。それで、お前は彼らのために何ができるんだい?
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