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第一話 お酒は二十歳になってから、事件
“生徒会長”というと学園生活の花形、全校生徒の憧れの的ってイメージが浮かびがちだけど、現実は違う。
この僕、名門柳櫻経済高校の生徒会長である朝霞了がそう断言するんだからまず間違いはない。
柳櫻経済高校は伝統ある私立高校だ。偏差値は六十後半。スポーツ特待制度もあり、文武共に優秀な生徒が揃っている。
生徒数は二千人を超える。いわばマンモス校というやつだ。
そんな大規模な学校の生徒会長を務める僕は、カリスマ性があって学業は優秀、特待生には敵わないが、運動神経も人並み以上、おまけに容姿だって・・・・・・まあ淡麗な方だろう。
ガラス窓越しに見下ろすグラウンドからは、初夏を知らせるセミのコーラスと、運動部達の活気ある声が僅かに聞こえる。
夕暮れが少しずつ空を赤く染めていく。時刻は既に十七時。六月のこの時間はまだ明るい。
きっと僕以外の人間は、各々有意義な青春の時を過ごしている頃なのだろう。
生徒会長だけが座ることの許された、本革張のデスクチェアにぐったりと腰掛け、僕は深く溜息をついた。
目の前には書類の山が高く聳え立っている。
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