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部屋を出て左に行くと、突き当りの壁に大きな父様の肖像画がある。
血のような赤い椅子に腰を掛け、こめかみを押したら転がり出そうな丸い目玉でいつもこちらを見ている。
『怖いことの後には楽しいこと。嫌なことの後には楽しいこと』
絵の向こうには姉様たちの部屋がある。
ここを超えれば、面白い絵本やプーシェさんのお菓子を用意した姉様たちが、必ず待っていてくれる。
私はいつもこう唱え、絵の下を通ったのだった。
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「さ、参りましょう?」
望まない時間はどうして早く来るのだろう。
父の待つ扉の前、私はあのおまじないを小さく繰り返す。
プーシェさんは私が呑み込みやすいよう、細かく整えた夕食をいくつも用意してくれているに違いない。
父と対面すると、私の喉はいつも首を絞められた鶏みたいになるのだから。
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