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「旦那様の車は、ここからあまり離れていない場所で発見されてしまいました。もうこのお屋敷が知られるのは時間の問題なのです。お話した過去の事故のことは覚えていらっしゃいますね?」
「その話ならさっき一の姉様から聞いたわ! だったら姉様たちも危険じゃないの!」
構わずガブリエルさんは話し続ける。
「お嬢様、あなたはあの時、お母様とお亡くなりになられたことになっているのです」
私は動きを止めた。
「同乗していた医者の行方がわかりません。あの男が捉えられ、己の身かわいさにあなたのことを口走れば、あなたのお命が危ないの」
「それは姉様たちも同じでしょうっ⁉ え、待ってまさか」
まさか。
「身代わり? ねぇ父様がそうしろって言ったの? そんな残酷なことをあなた達も受け入れて姉様たちに承諾させたの?」
「お嬢様‥‥‥」
ガブリエルさんがプーシェさんを見た。プーシェさんは背を向けたまま、答えるように二度頷く。
「あなたに、御姉妹はおられません」
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