イリスの日々

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「あのような山の奥で、ご旅行にも行けず、お屋敷の中でただ一人お過ごしになってきたのです。少しでもお心が休まるのならと、プーシェも私もお嬢様の「物語」にお付き合いしてまいりました。けれど、旦那様が亡くなられ、旦那様唯一の希望であったあなた様は立派な大人になられた。私とプーシェは子供の頃からずっと、旦那様よりひとかたならぬ御恩を受けております。これからも、私達二人が必ずあなたをお守りいたします。ですから、どうぞ今ほんの少し、前をお向きになってくださいませ」 ここまでよく聞けたと思う。 私は座席に倒れた。
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