芽衣子のピアノ

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芽衣子のピアノ

 どうして双子というものは、全て一緒でなければならないんだろう。  同じ髪型、同じ服装、同じ生活。ただでさえ同じ顔をしているのに、周囲はちゃんと見わけがつくんだろうか。  ピアノを習いたいと言い出したのは優衣子で、あたしはそれに便乗する形で始めた。 「優衣子ちゃんはちゃんと楽譜通りに弾いているでしょう?芽衣子ちゃんも見習ってちゃんとしようね?」  言われれば言われるほど、天の邪鬼だったあたしは逆らい続けた。  ちゃんとしたピアノは、優衣子が弾いてくれる。  だから、もういっそ全部めちゃくちゃにやってやろう、と思ったのだ。  ピアニッシモはフォルテッシモに。リタルダントはアッチェレランドに。全部真逆にして遊び出した。  怒ることを忘れてぽかん、とした先生の顔は、今でも忘れない。 「芽衣ちゃん、すごい!」  優衣子は、にこにこのん気に笑っていた。
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