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「おかえり、遅かったね」
明りのついたリビングを覗くと、優衣子がいた。テーブルの上には招待客リストが散らばっているから、結婚式の準備をしていたのだろう。
「まだ寝ないの?」
「うん、色々準備しておかないといけないこともあったから」
「結婚式って面倒なんだねえ」
「でも楽しいよ?」
「そうかなぁ、あたしは結婚したくないなぁ」
「言うと思った」
ふふ、と笑う。双子なのに、同じ顔なのに、優衣子のこの柔らかさは何だろう。
「芽衣ちゃん、今度は路上でやるんだっけ?」
「しようと思ってたんだけど、最近警察とかうるさいんだよねぇ」
「表現の自由だ、って主張したら?」
「そんな若さもうないよー」
アルバイト先の制服の入った袋をぼん、とソファに放り投げて、それからあたしもダイブした。
「お金ないから大したことしてあげらんないけどさ、なんか欲しいものあったら言ってよ、バイト増やすからさ」
「いいよそんなの、芽衣ちゃんは芽衣ちゃんのすべきことを頑張って」
最近の優衣子は、本当に幸せそうに笑う。産まれる前からずっと一緒だったあたしでさえ知らないような顔をして、ふにゃふにゃと笑う。
これが、幸せってことなんだろう。
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