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夢結のゼリーと、オレのヤキモチ
「桜海くーん」
階段上りながら、オレを呼ぶ夢結の声、元気。
「あ?」
「ゼリーできてたの…食べてくれる?」
ゼリー持って部屋に戻ってきて、さっきの元気な声から恥ずかしそうな夢結になってる。
「さんきゅー」
「…うん」
夢結、どうかな、って顔に書いてるぞ。
そんな夢結に見つめられながら、ひと口食べてみる。
「お、うめぇ」
「ほんと?よかったぁ」
手たたいて喜んでんの。ちびっこかよ夢結。
てか、なんでそんな、かわいいの。
「あのさ」
「うん?」
「みんなしてオレのこと、おみ、って呼ぶだろ」
「あ、うん」
「だから夢結も、おみでいーよ」
実際、夢結におみ、って呼ばれたらどんなんかな、ってドキドキしながら言ってみた。
「あたしも、いいの?桜海くんじゃなくて、おみくん?」
うぁ、やべ!!
夢結に言われたらくすぐって~
なんだー?この感情。
しかも夢結、またほっぺた赤くしてねぇ?
「ん、いーよ、桜海だとなんか長ぇし、おみで」
「おみ、くん」
確かめるように言ってるの聞いて、オレがドキッとしてるなんて、夢結は思ってないだろーな。
ゼリーの味見して、ふたりでリビング降りたら、オレの母さん来てた。
「え?なんでいんの?」
「話したでしょ、夢結ちゃんのママとは仲よくしてもらってるの」
「こちらこそよ〜桜海くん、夢結といつも仲よくしてくれてありがとうねー」
「…いえ」
さっきのドキドキ、まだ大事に取っときたかったのに。ちょっと親に邪魔された気ぃする。
「よかったらいっぱい食べてね、夢結ね、すっごくがんばったのよ」
「もうっ…やめてママ」
「だってホントのことじゃない」
「…恥ずかしいから」
また真っ赤な夢結。
恥ずかしいって、なんでだよ。
ゼリー、みんなで一緒に食べた。
「…おいっし、マジすげーなお前」
「…うれしい」
「桜海、夢結ちゃんのこと、お前なんて言わないの」
「あ、ごめん」
「…ううん」
「ふふっ、なんかかーわいい」
「ほんとねー」
ふたりがニコニコして、オレらのこと見てる。ちょ、照れくさい。
「ねぇ、夢結ちゃん、よくお菓子作るの?」
「ゼリーは初めてです」
「あのね、桜海くんが来るからって、がんばったのよ」
「…え」
マジか、オレのために?
「もうっ、ママやめてってば」
夢結、真っ赤っかになってるし。
もしかして…夢結のやつ、オレのこと…?
や、都合よく考えすぎだろオレ。
「前にもよく作ってたのよね」
「…男の子に?」
「前の学校にね、仲いい子いたの」
はぁ?何だよそれ。そんな男子いたのかよ。
…ふーん
喜んだオレ…バカみてぇじゃん。
それ聞いて、お代わりする気満々だったけど、すっかり失せた。
「…ごちそーさま」
あ、やべ。
つい、ちょっと乱暴にお皿置いちゃった。
オレって気持ち出やすいんだよなぁ…気をつけてんだけど。
「…っ」
さっきまでかわいい笑顔だった夢結、サッと顔色が変わった。
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