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転校生
オレもいよいよ高学年。
5年生になって、担任は異動してきた牧田先生。
なんかスポーツやってたのかな、スーツよりジャージが似合いそう。
黒板に書かれた文字は思ってたよりかきれい。
「牧田雅史、と言います。みんなよろしく」
どんな先生だろう、ってみんな思ってるよな。
はきはきしたよく通る声。頼りになりそうな気がする。
「みんな、ちょっと待ってて」
先生は教室の前の戸を開けて、誰かとしゃべってる。
「転校生だよな、校庭の端っこに何人かいたの見たろ?」
「あの中のどの子だろーね」
クラス替えしたばっかでみんな落ち着かねーし、知らない先生だし、転校生まで来るってなって、余計にざわざわしてる教室。
始業式は、天気がいいと校庭で、雨だと体育館に集まってやる。
そのときに新学年のクラス名簿が渡されて、担任発表はそのあと。
クラスの列に並ばずに、端の方に一列に並んでるのが転校生。
毎年20人くらいいるけど、転校生ってどんな気持ちなんだろ。
わかんねーとこに来んのは、心細いだろうな。
「先生も転校生みたいなもんだけど、このクラスにひとり転校生いるから紹介するね、入って」
牧田先生が手招きすると、静かに女の子が入ってきた。
すらっと背が高くて色白。
オレよりも背が高そう。
先生が、さっき書いた自分の名前の隣に、和泉夢結、って書いた。
なんて読むんだ?
てか、めちゃくちゃかわいい。
「…和泉夢結です。よろしくお願いします」
いずみ、めい、って言うんだ。名前もかわいいな。
生まれて初めて、女子にかわいい、って思ったらすっげードキドキしてる。
こんなの、つるんでるやつらに知られたらめちゃ恥ずい。
あんま見ないようにしたいのに、じーっと見ちゃってるオレ、ヤバいやつじゃね?
って思ってんのに
「席は…えーと、お、その空いてるトコでいいか?」
「…はい」
は?!
ちょ、待って。
オレの方に向かってきてる。
「んーと、伊坂、桜海?」
「はい、おうみ、って読みます」
「そうか、和泉のこと頼んだぞ」
「は?」
素っ頓狂な声出ちゃったじゃねーか。
「…あの、よろしくね」
ちっさな声で挨拶して、オレの隣に座る…和泉、夢結。
なんかいい匂いしてくる気がする。
「…おう」
きっと緊張してるし、オレ、ほんとはすっげぇうれしいのに、ぶっきらぼうな返事しかできねぇ。
つーか…やべぇ。
隣に来られたらオレ…初めてオレのが硬くなってる気がする。
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