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はじまりは
客の人数や話の内容によって、話題を合わせるのも、くるくると表情を変えるのも、それなりに最初から上手かった。
これらは完全に父親から虐待されて虐げられて育った、そのお陰だとしか思えないが、まあ役に立ったのだ、そのスキルが。
空気を読み、機嫌を窺い、ぶん殴られないように、怒りを買わないように、無理にでもおだてて見せ、どんなむちゃくちゃな「喜ばせ方」にも「すごく喜んで見せる」ことで生きてきた。
それら、全てが役に立った。
しかし、通っていた専門学校をとある事情により辞めてしまい、そんな有り様で「仕送りは続けて下さい」などと親に言えるわけもなく、私は友人に誘われるままにスナックよりもお給料の良い、キャバクラへと働き先を変えることにした。
普通の人からしたらスナックもキャバクラも同じようなものかもしれないが、私にとってはえらい違いだった。
何せ、スナックでは私はいつも普通のアパレルショップで購入した膝丈のワンピースを着ていたのだが、キャバクラでは煌びやかなドレスだったり、カッコイイスーツだったり、イベントの日にはチャイナ服やセーラー服、夏になれば浴衣デーなんて言うものもあったし、花魁のような着物を真似た偽物花魁へと変身できるすごく素敵な日なんて言うものもあったのだ。
とにかく、今までの私からしたら、一生縁のなかったであろう、綺麗で艶っぽい、そんなドレスを着ることだって出来たのだ。
私は様々な土地にある、様々なキャバクラやラウンジに勤めたことがあるが、とりあえず18歳の半ばくらいから、初めてキャバクラに勤めはじめた時の話を書こうと思う。
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