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変化
私ははじめてNo2入りを果たした月から、次の月は一旦No3に落ちたが、そのまた次の月には再びNo2入りをする、と言った形で、だいたいNo3までには入れるようなキャストになっていた。
とは言っても、まだたった数か月ほどしか経ってはいなかったが。
No1はミサだったり、他のキャストのお姉さんだったり、色々と入れ替わった。
私は、どうしてもNo1にはなれないのだな、と痛感していた。
どれだけ私が出来ることを精一杯やったとしても、結局入れるのはNo2まで止まりであった。
やはりNo1になるには、恵まれた容姿やスタイルはもちろんだが、何よりも才能、相当な努力、向き不向き、色々なものが関係しているのだろうな、と思えた。
この店の客層に合うか合わないかや、合わせられるか合わせられないか、運も必要だろうし、と、とにかく痛いほど思い知らされた。
けれど、No上位を数か月キープし続けたことにより、明らかに店の男性スタッフや、客の態度が変わったことには気づいていた。
それはもちろん、マネージャーからの私への接し方も同様だった。
私生活の相談にも何かと乗ってくれはるようになったし、客のいない時、店で私とすれ違う際などには、何かしら一言、嬉しいことや、喜ばせようとするような言葉をかけて行ってくれたりするのだ。
店のホームページに写真が載ったこともあってか、私の容姿やスタイルを気に入って来店し、指名してくれる奇特な客もチラホラと現れ、私は営業にそれまで以上に熱心に取り組むようになった。
もちろんそれだけ指名客が増えた、売り上げを上げることが出来るようになった、と言うことは、それなりの量の酒を飲まなければならないと言うことでもある。
私はちょこちょこと店で酔っぱらってしまうことも増えて来ていた。
いくら酒に強かったとは言え、毎度色々な種類の酒をちゃんぽんしたり、客から一気飲みを望まれればそうしていたので、結果的に泥酔してしまう時なんかもあった。
なるべくそんな状態にはならなように、こまめにトイレに立ち吐くこともあったが、そう上手く行かない日だってある。
けれど、客にさえついていれば、私は眠ってしまうこともなかったし、なんとか頭を回すことが出来た。
客の前では、辛うじて理性を保つことが出来ていたのだ。
ただ、泥酔状態の中で、それでもなんとか接客だけはちゃんと続けられている状態だったとしても、ラストになって全ての客が帰ると、もうダメだった。
ちゃんと思考を働かせたり、感情を抑制をすることが難しくなってしまう。
ロッカールームに向かい、着替えて帰宅する為の準備をするキャストのお姉さんたちと、男性スタッフだけが残る店内。
そこに残された私は、自分をコントロールする力を失いつつある。
そんな日々が、いつの間にかずっと続いた。
そういう時には、ビップルームで数時間寝かせてもらい、酔いがある程度さめた頃にマネージャーが起こしに来てくれたりするようになった。
そんな、ちょっとだけ特別なキャストのように扱ってもらえることが許されるようになっていた。
私とミサと、もしくはNo上位に入っている、よく酒を飲むキャストのお姉さんたちと共に、そうやって寝かせてもらう日もあったし、私一人だけの場合もあった。
もちろん、ミサだけの場合だってあったし、No上位の良く酒を飲むキャストのお姉さん一人だけの場合だってあった。
暗黙のルールなのかよくわからないが、店が終わってもビップルームで休ませてもらうことが出来たのは、No10くらいまでに良く入っており、たくさんの酒を飲むことで店に貢献しているキャストのお姉さんや、私だった。
その日はたまたま、ビップルームで休ませてもらっていたのが、私一人だけの場合の、そんな日だった。
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