彼の部屋

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彼の部屋

そのコンビニの、すぐ上がマネージャーの住んでいるマンションになっていた。 つまり、一階にコンビニが入っている、二階からは人が住めるような部屋になっていると言う、そういう作りのマンションだった。 便利でいいな、なんて思いながら、コンビニのすぐ脇にある自動ドアになっている入り口から中へと入る。 そんなに広くはないフロアには、エレベーターと階段があって、マネージャーはエレベーターの方に向かった。 マネージャーの部屋は三階だった。 わりと新しいマンションのようで、部屋のあるところまで続く外廊下には、日当たりの良さを遮らないようにする為、私の胸元辺りまでの高さのすりガラスのようなものが柵として設置されていた。 そこを、見慣れたマネージャーの背中を眺めながら歩く。 いつも見ていた、背中を見ながら歩く。 「マネージャー、お名前、なんでしたっけ」 「おまえ、知らなかったの」 「気にしたこと、ありませんでした」 「俺も名刺持ってるから、後でやるよ」 声をかけようとして、思わず、仕事の時間じゃないのだから、店にいるわけではないのだから、名前で呼ぼうと思って聞いてしまった。 後で教えてくれるらしい。 そう言えば私は、ミサの本名も知らないし、他のキャストのお姉さんたちの本当の名前も知らないし、店長や部長の名前だってそうだ。 何も、本当のことなど、一つたりとも知らない。 そんな世界で生きていた。 マネージャーが足を止める。 どうやらここが彼の部屋らしい。 鍵を取り出してドアを開けると、私に「入っていいよ」と言う。
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