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痩せた胸
目の前の洗面台の鏡に映る自分の裸を見て、ああ貧相だなあ、なんでこんなに胸がないのだろう、と少しばかり嘆く。
すりガラスになっている折り戸を開けて、ユニットバスではない少し広めの浴槽の内側に入ると、シャワーを出してお湯になるのを待つ。
その間、浴槽の縁に置いてある物のどれがシャンプーで、どれがボディーソープなのかを一個一個確認した。
私はガサツな方なので、ヘアメさんに頼んでやってもらったキャバ嬢らしい頭から、ヘアピンを引っかかっている髪ごとブチブチと抜いて、シャンプーの横に重ねる。
錆びないように後で拭かなくては、とそんなことを考えつつ適当に男モノのシャンプーで長い髪を泡立て、適当にボディーソープをつけたタオルで体をこすり、適当に買って来たクレンジングオイルで化粧を落とす。
続いてまた、適当に洗顔フォームで顔を泡だらけにすると、最後にシャワーで一気に頭から全部流した。
あまり時間をかけたくなかったと言うのも多少はある。
だって、中村さんが寝てしまうかもしれない。
そうしたら、もうお喋りは出来ないし、店にだって先に出勤してしまうだろう。
もしくは、私には一旦帰れと言うかもしれない。
嫌だ、出来るだけ長く一緒にいたい、と、そう思っていた。
忘れずにヘアピンを手のひらに握って、バスルームの折り戸を開けると、勝手に棚からバスタオルを拝借して髪と体を拭いた。
それからブラをつけ、さっき脱いだワンピースに着替えようとしたら、脱いでまとめておいた衣類たちを、一枚のTシャツが覆っていた。
いつの間にか中村さんが用意してくれていたのだろう。
彼のTシャツだ。
私はそれに腕を通し、広い襟刳りから頭を出す。
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