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外はもう明るい。 晴れやかな朝が来て、買って来た酒が残り少なくなった頃、中村さんは私に、先に布団に入ってな、と言ってシャワーを浴びに行った。 私はまた少し酔っぱらって、とってもいい気分だった。 何時に起きれば良いのかわからなかったので、目覚ましのアプリはかけず、カバンの中から歯ブラシセットと、いつも携帯しているスマホの充電器を取り出し、コンセントを刺せる場所を探し出して充電をする。 歯ブラシセットは、店で吐いた後に歯を磨く為に、出勤する日は常備していた。 キッチンへ行くと、背中でシャワーの音を聞きながら歯を磨く。 歯を磨いたって、どうせ残った最後のお酒を、また寝る直前まで飲むと言うことは自分でもわかっていたけれど。 歯磨き粉をペッと小さなシンクに吐き出すと、蛇口をひねって水道から水を出し、きちんと流して綺麗にする。 それから手のひらをくっつけて中に水をためると、口まで運んで含み、ぶくぶくと頬を何回も膨らませて、それも排水溝へと流す。 アルコールと煙草のヤニが混じり合っていた口内がスッキリした、と思うと同時に、シャワーの音が止み、折り戸の開く音が聞こえた。 中村さんがシャワーから出てくるのがわかったので、私は歯磨きセットをシンクの上にある小さな窓の棚のところに置くと、布団のある方の部屋へと戻った。 カバンの中からピルケースを取り出すと、心療内科で処方されている眠剤と頓服、就寝前に飲む用の薬たちをパラパラと出してテーブルの上に並べる。 私は処方されている薬も普段から毎日持ち歩いていた。 何かあって、誰かの家に泊まることになった際に困らないように、と。 これは、眠る時に飲もう。 今飲んですぐに眠くなってしまってはもったいない。 だって、これから何かあるかもしれないし、まあないかもしれないけれど、とにかくそういう男女の営みが行われた場合のことを考えて、すぐには服薬しないことに決めた。 私はぶっちゃけどっちでも良かった。 どうでも良いのだ、行為は。 してもしなくてもなんでもいいし、どうでもいい。 相手がしたいのであればするし、そんな気がないのであればしなくても良い。 その程度のことだった。 その行為に関して重く捉えたことが一切なかった。 ただ一つ、どうしても譲れないこと。 それは、「客とは絶対に寝ない」と言うこと。 私の信条はこのたった一つだ。 部屋が煙たくなっていたので、私は自分の煙草ではなくて、中村さんの吸っている方の煙草の箱から勝手に一本もらうと、火をつけてから灰皿を手に持って、狭いバルコニーへと向かう。 窓を半分だけ開けて、そろりと外に出た。 端っこに、空き缶の詰まったゴミ袋が一個と、焼酎の瓶が何本か立ててある。 私が朝の空気を感じるには、少し広いくらいのスペースがそこにはあった。 さっきスマホを見たので、今が午前8時過ぎであると言うことはわかっていた。 まだ、起きていられる。 私の普段の睡眠は5時間あれば十分。 店へ出勤予定時間は20時で、今日はどうやら同伴してくれる客はいなさそうだ。 と、言うか、こちらの方から敢えて誰も誘わなかっただけなのだが。
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