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メンヘラ
そうそう、その頃ちょうど、私には同じ店で働いていた、私よりも歳が少し上のキャストのお姉さんと仲良くなった。
店が終わった後で一緒に飲みに行ったり、ご飯を食べに行ったり、なんなら二人組で来店するお客さんがいた際などには、息が合うから、と共に同じ卓につけてもらえるくらいには仲が良くなって行く。
そのお姉さんの名前、と言うか源氏名は、ミサ。
切れ長で涼やかな印象の黒目がちな目を持ち、長くふさふさとした睫毛が愛らしい、ミサはそんな、和風美人と言える顔立ちをしたオンナのコだ。
長く伸ばされた前髪は真ん中で分けられ、形の良い額が覗くように輪郭をなぞっている。
後ろは、腰に届くようなストレートの黒髪で、艶々と彼女の動きに合わせ揺れるたび、肌を滑るのが色っぽい。
背が高くてスタイルの良い、会話を自分主体に持って行くことが上手なキャストのお姉さんだった。
ところが、大和撫子で清楚そうで、一見控えめな古風な印象を与えるその容姿からは、想像することなど出来ないような接客をする。
ある意味、多分特殊であると言える営業スタイルを得意としており、指名客を何人も抱える人気キャスト、そんなミサはこの仕事が得意であるように思え、羨ましくて、何より憧れでもあった。
私にとってミサは、酒には強くはかったが量を多く飲めて、客に対してもノリが良く、と言うか軽すぎて、何かを諦めているのか、それとも大して大事と捉えていないのか、割となんでも上手いことやってのけているように感じさせる、そんなキャストだった、まさにはじめだけは、だが。
私からしたら本当に良い子なのだが、ミサの仕事の仕方を嫌うキャストも少なからずいて、影では悪口を言われていたのも知っている。
でも、私はそんなことはどうでも良かったんだ。
まず、何故私とミサが仲良くなったのかと言うと、ナンパされたからだ、ミサから。
ある日、オープン前に、待機席でミサの方から私に話しかけて来たのが始まりだった。
メンヘラはメンヘラを呼ぶのだ。
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