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帰宅途中の道。角を曲がって一人になったところで、私は何時も涙が溢れてくる。
今日も話しかけられなかった。
目も合わなかった。
あと何日会えるの?
卒業なんてしたくない。
一度考え出すとやめられないのが私の悪いところで、分かっていてもコントロールが出来ない。
こんなに苦しいなら、いっそこの想いごと綺麗さっぱり忘れてしまいたい。
「ぅ、うっ......っう......」
流石に声を出して泣くのはまずい。
クラスメイトにでも見られたら、変な噂がたってしまう。
慌てて口元を押さえ、誰にも見られていないかと顔を上げた時だった。
何時も通っていた道に、見慣れない建物が建っていることに気がついた。
「思い出......レンタル?」
店前で揺れるノボリには、目立つ字体でそう記されている。
いつの間にこんなところに。レンタルショップだろうか。
ガラス製のドア越しに見えているのは、おそらく陳列するDVDだ。
どうせ泣きながら帰っても親に心配されるだけ。落ち着くまで見て回るのもいいかもしれない。
そう思うのと同時に、このレンタルショップに強く惹き付けられるだけのなにかを感じていた。なにか、好奇心のようなものを。
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