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輪廻を信じて
私がえらんだビルは、銀行で、低い建物しかないこの街で、居心地悪そうにしていた。
子ども一人だと怪しまれるので、入っていく大人の後ろをついていき、中に入り込む。入って右に階段がある。屋上までエレベーターはないので、階段を使うことを決めていた。ここには親がいた頃に…。もう、親のことは思い出したくない。
階段を登りきった頃にはもう、息が切れていた。
「キィ」
古くて少し錆びついたドアを少し開けて、屋上の様子をうかがう。誰もいなさそうだ。
「まあ、こんなとこ来る人いない…よね」
そうつぶやいてから、ドアを開け放って…っていうことには、錆びついたドアが許さなかった。少ししかあかなかったドアの隙間をすり抜けて屋上へでる。さっきまで晴れていた空は、どんよりと曇っていた。
表通り側を避けて、反対の裏路地の方の柵へ向かう。下を除くと、路地の様子が見えないほど真っ暗な闇が広がっていた。
「ここに決めた」
そこには室外機が2台重ねて置いてあり、落下防止の高い柵を越えるための足場にはもってこいだ。
「よいしょ…」
登ってみると結構な高さだ。
「あ…れ」
少し膝が震えている。私…怖い、のかな。もっと生きたいって、思ってる、のかな。
いや、そんなことありえない。
あんだけ、覚悟決めてきたのに、ここに来てなんで震えてるの?
「なんで…なん…で…」
これまで、どんだけいじめられても、どんだけみじめでも、我慢した涙が、足元を濡らしていく。
その時だった。
「ビュンッ」
「わぁっっ」
強い風が吹いて、体が傾いた。
「うっ」
私の体は、そのまま柵を超えて闇の中に…
落ちていった。
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