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充実した気持ちでバリバリ働いていたら、あっというまに終業時間を迎えていた。
職場を出ると、見慣れた能面が私を待っていた。驚いて駆け寄った私に、機械のようなトーンで夫は言う。
「今日は早く終わったから、その、君と一緒に帰りたくて」
「……」
「柚葉?」
「……竜巻どころか、超大型台風上陸だよ」
熱くなった顔を隠すように手で覆う。夫は一瞬きょとんとした後、スイッチが入ったように「暴走モード」に突入した。
「知ってるかい? 『台風上陸』って言葉があるけど、上陸の正しい定義は『台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸に達した場合』でね。それ以外、例えば沖縄に台風が達した場合なんかは上陸とは言わず……」
自然と肩を並べて歩き出す。今日は疲れたし外食にしようかななんて思いつつ、私は夫の話に相槌を打った。
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