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代替可能な私
四月。都内某所。
一年ぶりに大学時代を過ごした街を訪れた私は、親友・恵那とともに当時バイトしていた居酒屋に客として来ていた。
「とりあえずビールでいいよね?」と同意を求める恵那は、この一年でずいぶん社会に適合したように見える。昔は店長オリジナルのサワーばかり飲んでいたのに。
「えー、では私と柚葉の一年ぶりの再会を祝しまして」
「うん」
「それと社会人二年目も頑張りましょうということで」
「そうだね」
「あ、それから柚葉結婚おめでとうの意も込めまして」
「今更? もう一年近く前だよ」
「最後に、私に素敵な彼氏ができるよう祈願しまして」
「はいはい」
苦笑いする私を無視して恵那は高々とジョッキをかかげた。
「かんぱーい!」
勢いよくジョッキをぶつけ、そのままビールを喉の奥に流し込む。久しぶりのアルコールが五臓六腑に染み渡り、私の喉は「ぷはぁ」と歓喜の悲鳴を上げた。
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