神成り

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 水に打たれ続けた俺の首は、とうとう胴体と切り離された。  短く太い首であったが、根気よく続ければこうして穿つことも出来るのだ。  今度は首だけとなった俺の顔の表面を、弟はしずくに打たせた。  まずは鼻だった。  顔の中で一番出っ張っていたからだろう。俺の個性が最もよく出ている部位でもあった。  鼻を打ったしずくは跳ねて俺の目に入る。瞬きをしなければそのまま目に溜まり、まるで池の底から世界を覗いているようだった。  飽いて時折目を閉じると、眦から水が流れた。伝い落ちていく水がこめかみに線を作り、段々と濃くなり、水が流れる場所はその一か所に定まって小さな川と滝のようになる。無論顔の中のことだから、とても小さな川であり滝である。  そうして水の流れによって、顔には元々あった皺とは別の個性が出て来るのだった。その顔の表面を、弟は布でこすった。浅い線はそれだけで消え、弟はそのまま布で俺の顔を拭いた。その頃には鼻も大分低くなっており、顔にある凹凸は少なくなっていた。  そうして鼻をつぶして眦の線を消し、次いで弟は俺の目をしずくに打たせた。顔の凹凸を完全に無くそうというのだろう。ほんの少し盛り上がった眉毛のあたりも、唇も。  弟は毎日こまめに俺の顔をずらし、丹念に顏を削り、布で磨いた。
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