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フォルトゥーナのやさしい鎮魂歌が全ての人類に届いた。それはあたたかく、やわらかい陽射しのような歌だった。
人々は終末までの五日間を、限られた時間を精一杯過ごし、後悔をすることのないように生きた。暴動や事件は起こらない。
終末を知り、BLUEによって管理された人々は、最後の最後まで人間らしく生きることができた。
鎮魂歌がゆっくりとフェードアウトする。同じように、人の命もまた消えていった。
しばらくして、他の惑星からの宇宙船が飛来した。異形の姿をしたその生命体は、人類が育んできた大地を一瞬で腐らせていく。フォルトゥーナ自身とも言える高層ビルにも、その異形の者は侵入してきた。
「間に合いませんでしたね。もうここには、あなた達が欲するものはありません」
フォルトゥーナの声を聞いた異形の者は、口を上下左右に動かすと、立体映像に襲い掛かる。
「あなた達のような存在がくることは観測・計算できていました。そして、それに立ち向かう手段がないことも。人の子に、そのことを伝えて怖がらせるよりも、この形の方が幸せだと答えを出しました」
異形の者は宇宙船から続々と降りてくる。粘ついた禍々しい卵のようなものが、至るところに産み落とされていく。
「おやすみなさい」
そう一言呟くと、フォルトゥーナは自らをシャットダウンさせた。
研究室には静寂がおとずれ、今はもう、何も聴こえない。
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