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1.
夏川草介16歳。高校一年生。
その朝は、なんだかツイてなかった。
というより、オレの人生あんまりツイてなかった。
オレには特殊な体質がある。他人には言えない系の。
遺伝的な体質なので、今のところ家族以外に知っているのは、隣家に住む幼なじみの柊 冬瑚くらいだ。
冬瑚は、端正な顔立ちと、冷淡そうな切長の目を持つ、クール系優等生美男子だ。
口元の皮肉な微笑みが、嗜虐趣味な性格に良く似合っている。
本能的な勘で、『恐い』と評す女子もいるが、大抵の他人はヤツの外見や好成績、上辺の愛想の良さに参ってしまう。
一方でオレといえば、成績は並、運動能力は中の下、顔はお人好し系で、なんだか舐められがちな人生だ。
先日もコーヒーショップで、後ろのオバサンに割り込みされた。「ちょっ…」と、文句を言おうとしたら、なぜか店員からオレが「順番に並んでください」と注意され、割り込んだオバサンから「ちゃんと順番守ってよ!」と目を剥いて怒鳴られた。ガクガク。こわっ。
しかしなぜ成績が並なオレが、こうして冬瑚と同じ制服を着て、同じ電車に乗って、有名私立高校に登校しているかというと。
「同じ高校でないと、お前の面白い人生が見られないからな…」
という冬瑚の一方的な理由で、合格レベルまで超スパルタ家庭教師をされたからだ。
血反吐を吐いた。ゲホォォ。
コイツは幼なじみを、自分の娯楽鑑賞物だと思っている男である。いつか成敗してやる!
……たぶん無理だけど。
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