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「ここはどこだ?」  気が付くと俺はしゃがんでいるのがやっとの狭くて暗い場所にいた。 「ここから下を見てくださーい」  女の子が指差したのは排水口のような四角くて小さな穴、何本かスリットが入っている。  言われた通り下を覗くと病室だった。なるほど、ここは天井裏で通気口から下を見てるってわけだ。 「よーく見てください」  よく見ると病床に横たわっているのは……俺か?医療機器に囲まれて、そこからたくさんの管が身体に伸びている。 「ICU(集中治療室)じゃないか、あれは俺か?いや待て、俺は今ここに居るよな、あれは誰だ?」  女の子はじっと下を眺めて言った。 「I see youです」 「は?」 「ICUとI see youで駄洒落てみました!」 「さっさと説明しろっ」 「重大な事実を説明する前に駄洒落で雰囲気を和ましただけですよ。I see you、私はあなたを見ている。つまりベッドで寝てるのはおじさんです」  俺は混乱した。 「私を(かば)ったおじさんは、バイクにぶち当たって生死を彷徨(さまよ)っています。今私の前にいるおじさんは幽体離脱した状態のおじさんです」  本来なら、ああそうですかと納得出来るわけ無い状況だが、何故だか俺は納得してしまった。 「ああそうですか……」  現状は理解したが、そもそもこいつに声をかけられなかったらこんな目には遭ってないはずだ。そこは納得いかない。 「なに言ってるんですか、私が声をかけなかったら、おじさんは横断歩道を渡り終えた直後に、歩道を走る暴走自転車に跳ねられて死ぬとこだったんですよ。つまり、生死を彷徨(さまよ)っている今のほうがマシって事です!でもねぇ……あの時、おじさんがレンタルを嫌がって時間をかけたりしなかったらこんな事には……」  女の子はまたもや胸元から目薬を取り出した。 「泣き真似はもういいよ。それで?どうなるんだ俺は?」 「どうなるって……」  女の子は胸元からICレコーダーを取り出し音声を再生した。 『契約するからさっさと起きろ』 「というわけで、契約を履行してもらいます!」
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