式神オ悩ミ相談室

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 翌朝、仕事を終えて帰宅すると、牛山が突然「主のところへ戻ることにする。世話になった」と言い出した。 「え? もういいの? 式神の極意は?」 「迷いが晴れた」 「そ、そう? 良かった…ね?」  何が何だかわからないが、とりあえず朝食中の父を呼び、「牛山さんの新しい部屋が見つかったそうです」と説明する。すると父は少し寂しそうに、「良かったな、牛山さん。またいつでも遊びに来てください」と挨拶した。 「有難きお言葉。世話になりました」  そう言って牛山は、父と硬い握手を交わす。  松原家の門まで送り、「またな。明水先生と三善(みよし)さんによろしく」と言うと、牛山は深々と一礼してゆっくりと駅の方角へと歩き出した。その後ろ姿を見送りながら、「何だかんだ楽しい一週間だったね」と、欠伸をしながら呟く。 「忌一よ。先に部屋で休んでおれ。わしは少々、牛山を送って来る」  「わかった」と返事をしようとした時には、肩口に腰かけていた桜爺の姿がいつの間にか消えていた。
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