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そんな中、本当にほんの一瞬だけ、みんなの息継ぎのタイミングが重なったのか、怒号が途切れた。
その一瞬の隙を狙ったように…。
ぷううう~~、ブブッ
「う…」
「え…」
音がしたほうを見ると、西村さんという60代の男性が、恥ずかしそうに、ちんまりと座っていた。
「今の、西村さん?」
「すみません。ビール飲んだらガスが…」
「あら…、ふふっ…」
「ぷっ」
「わははははは」
「あははははは」
全員が笑い出して、西村さんも「えへへ」と笑う。ついでにプウっと、追加の一発を放出する。
「えっ、もう一発?!」
「窓開けて」
「ははは」
すかさず、市の職員の一人が声を張り上げた。
「後日、改めて反省会を開きます。今日は皆さんもお疲れでしょうから、この場は和やかに…」
この後は、みんな「まあまあ」なんて言いながら、大人しくビールを飲んでいた。戦意を喪失したのだ。
西村さん、あれ、絶対にわざとだよな。
あそこでああいうことができるのは、自分しかいないと思ってやったのだろうか。
それとも、そこまでではなく、たまたま思い付いて、軽い気持ちでやったのか。
真相は分からない。
しかし、いずれにせよ、なかなかできることではない。
今回のことで、僕の中の、西村さんに対する評価は、大きく変化した。
(完)
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